kikuyamaru's blog

こちらにはノンジャンルの長文などを書いています。

「鞍馬天狗」誕生90年 / 大佛次郎没後40年

関連展示をハシゴしました。

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芸映画を見る会「鞍馬天狗 黄金地獄」(1942大映 1953年改修版 監督 伊藤大輔 モノクロ91分)

1/25,26の両日 13:30-  神奈川近代文学館ホール。
1/26に見に行きました。アラカン鞍馬天狗

ときは明治4年。開化の横濱が舞台。荷揚げ場ののれんには漢字とローマ字が混じる。
異人のサーカス(曲馬団)が練り歩き(金髪のお姉ちゃんが沢山)、空飛ぶ風船に観覧無料券がくくりつけられて降りてくる。皆がそれに群がる。
そんな、ほんまかいなという光景から始まる映画。

杉作少年のパチンコから、中国人の持った銃口への繋ぎなども、伊藤大輔監督の絵作りの面白さです。

横濱にはドックヤードがあり、そこで蒸気船が建造されている。
その地下で、ある不正が…という話。この話、悪いのは外国人で、戦時中の時節柄というやつです。

江戸の傘張り浪人がご一新でどうなるかというと、なんとこうもり傘を針と糸で縫っています。これが倉田典膳。この縫い針は、杉作の「ねえやん」である、盲目の女性の心情を示す小道具になります。

建造中の(これから日本が世界に出ていくために必要な…戦艦にも転用しうる…)一隻の蒸気船と、盲目の女性の命を守るために、倉田典膳は命を差し出そうとするのですが、このあたりは、なにかすっきりしません。
幕末・維新の国内の動乱に比べると、どうも背景が小さいような。
そんなことで死なれては困るような。(死なないけど)

 

神奈川近代文学館大佛次郎没後40年記念特設コーナー(1/26で終了)には、パリ燃ゆ、天皇の世紀などの展示。

大佛次郎は明治30年の生まれであり、天皇の世紀の空気感を直に感じられる世代であったことでしょう。おそらく、維新には遅れたという気分の、しかしその後の激動についてはすべてを見た世代です。

友人が描いたという、大佛次郎の生涯を絵巻にしたものが面白かった。鎌倉の大仏に「大佛太郎」のキャプション。鞍馬天狗には「大入」「大入」「大入」と。

それと、大佛次郎愛用の猫型の手あぶりが、ちょっとほしいなあ。なんて。

 


少し小さいサイズのものが、大佛次郎記念館の方にもありました。

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大佛次郎記念館は、鞍馬天狗誕生90年の展示がされていました。(3/16まで)
「ポケット」誌に、さまざまなペンネームでものを書いていた時代に、鈴木徳太郎とやりとしした書簡が展示されています。うちの雑誌では日本趣味のものを書け、あるいは鞍馬天狗をさっさと出せ、等々。
編集が作家を引っ張るということは、昔からあるものなのですね。

 

この日は、急な雹や雨に見舞われました。

記念館横の喫茶店「霧笛」で雨宿り。この店は雨の日ばかりが記憶に残っています。f:id:kikuyamaru:20140126222005j:plain