kikuyamaru's blog

こちらにはノンジャンルの長文などを書いています。

新橋演舞場 歌舞伎NEXT 阿弖流為

7/13 新橋演舞場 夜の部 16:30 歌舞伎NEXT 阿弖流為
(2015/7/5-千穐楽 7/27 昼夜同演目
  阿弖流為染五郎坂上田村麻呂利仁:勘九郎、立烏帽子/鈴鹿七之助、御霊御前:萬次郎、蛮甲:亀蔵

阿弖流為アテルイと読みます。文字が出ない端末があったらごめんなさい。
 

もう13年前になるんだそうです、劇団☆新感線アテルイ
夜の新橋演舞場に見に行ったのです。たしか2階席だったと思う。
アテルイ染五郎、田村麻呂を堤真一

ラストは、昔行った達谷窟(たっこくのいわや)と舞台上のねぶたのイメージとが重なって、じんとしました。
東北人にはぐっと来るものがある芝居でした。

演舞場はでかいです。
この布陣の中で染五郎だけがこの大きさの舞台を毎日相手にしているんだなと実感するものがありました。正直、歌舞伎よりずっといい(酷)。自分が見た染五郎史上最高のカッコよさ、それはこれまで十ン年不動の一位で、やぶられたことがないです(…ぅぅ。染がんばって)。

で、それを歌舞伎に仕立て直してもう一度世に問うのが歌舞伎NEXT 阿弖流為です。
わたくし、染五郎も、中村屋兄弟もそんなにひいきではありません。しかし、今回の歌舞伎版、阿弖流為は見ておかねばならぬと思いました。
あれ以上はないかもしれない。けれどアテルイをもう一度見たい。ややこわいもの見たさでもある。

これから大阪公演もあることなので、詳しい筋は避けますが、

(#これ書いてる今現在、10月の大阪公演が発売中で三等席もとれそうです。 )
鈴鹿と立烏帽子の位置づけなど、前とは違っており(つか、もともとここが1人2役ではないですね。)筋立てが整理されていたように思います。
冒頭から違うなと思わせるのはこのへんです。立烏帽子は前よりもいい役になったんじゃないでしょうか。

逆に、ふっと前のことを思い出したのは、
下手花道に田村麻呂、上手花道にアテルイ。名乗りあう二人。
そうだ、こんなことがあったかもしれない。
前の時も両花道だったのではないかしら。
両花道がこれほど効果的なことはめったにないことです。
どっちを見たらいいのかとってもこまる。
 
前半には歌舞伎を意識したお遊びがあります。文七元結とか、弁天小僧とか。楽しそうでよろしい。
 
また、霊的なものに女形がしっくりきます。萬次郎、七之助、いずれも神秘的で大きな力に納得させられます。
(あと、女形ならあんないでたちしてみたい、って思うんじゃないですかねえ。
 とくに萬次郎さんがキュートです。
 昔、俳優祭でベルばらをやったときに雀右衛門さんがマリーアントワネットで、
 当時の児太郎/オスカルが「マリー雀右衛門のおじさんは、朝からあの赤い衣装を着てご満悦なのだ!」
 と言ってたのを思い出しました。)
また、血しぶきによって目が快癒する(誰の何がそれとは書けないでござる)なども歌舞伎的。

あとー…熊はどうかと思う。うん。

殺陣は、どんたっぽじゃなく、スピード感のある現代的なもの。そして安定感があります。
大人数の殺陣のなかでは今年の暫定1位。
 
染五郎勘九郎は走り回り、斬り結び、嘆き、怒り、休む暇がない。よくも毎日2回ひと月もできるものだ。
何となくですが、勘九郎のほうは、世話な感情を感じさせます。心がその身体の中にあるという気がする。
染五郎はどうも、何メートルか先の上の方に魂があるのじゃないかなと思う。
これはやはり逆はないだろう。アテルイ染五郎で、田村麻呂が勘九郎、でしょう。
普通の人間じゃないほうが染です。

この手の芝居は、いつもは一緒にならないような座組になるので、それぞれの芝居の異質さがめだったりすることがあるものです。前の…去年かな?陰陽師のときにはそれを感じました。今回は異質な染五郎勘九郎が、異質で当たり前な立場を演じているせいか、それを感じませんでした。また脇の人たちも際立って歌舞伎な人、際立って歌舞伎じゃない人がいなくて、違和感がなかったです。
宗之助ちゃん、出てたんだね。気づきませんでした。あとから配役見てびっくり。その役だったの?
かわいらしい娘の頃のイメージばかりで。
亀蔵さんは、らしい役ですね。

ラストは、やりきれなさをぬぐって、めでたしの気分が残りました。このへんも歌舞伎ですね。
 
「歌舞伎NEXT」は観やすいお芝居でした。
引き合いに出して申し訳ないが、スーパー歌舞伎よりも、リズムがとっつきやすいと思いました。
歌舞伎を見ない人にはどう見えるんだろうね。言葉は平易でイヤホンガイドが要るようなものではありません。
はじめて見る方でもOKだと思います。
 
やっぱり13年前の思い出は根強いな。けど、いまの染五郎もすごい。十年に一度の格好良さに、芯の通った芝居です。
なんで新橋は一幕見がないのだ。あったら通ってるなあ。
また何年かのちに会えたら嬉しいですね。
 
#いつも歌舞伎は別の名前で別の所にかいています。ネタバレを厭わずに。