kikuyamaru's blog

こちらにはノンジャンルの長文などを書いています。

ジルドレの帰還(Darc 〜麗しのオールドローズ〜)に寄せて

Darc 〜麗しのオールドローズ
2019年10月24日(木)~10月27日(日)
中目黒キンケロ・シアター

全席指定席
先行(特典付):¥7,000
一般(特典付):¥7,000
一般:¥5,000

先行の特典はスペシャル抽選会となっていましたが、箱の中から紙を1枚引くと誰かのサインが書いてあるというものでした。(抽選会?)
あと7000円チケットの特典は非売品ブロマイドでした。
********
いつものように、関根目線にて。
********
浅草六区ゆめまち劇場が幕を下したのは今年2019年の5月のことでした。
パフォーマー達に活躍の場を与えてきた、セリフのない舞台、ジルドレシリーズはその劇場で上演を重ねてきました。
私は関根さんの出演したzeroという作品だけを見たのですが、ナレーションやチラシに補足を委ねていて、ステージの中で人々の関連性を表現しきれていなかったり、台詞がない分を叫びや唸りといった音声で補おうとしているのを見ていると、だったら普通に台詞ありでやったらいいのに…と、パフォーマンス自体の高い完成度とは別のところでストレスを感じてしまい、この舞台は、わたし、合わないな…と敬遠してしまいました。

そのジルドレの流れを組む芝居がキンケロシアターでかかり、関根さんが出るという。
こんどは台詞あり。
だけどちゃんと舞台の上ですべてが完結するようになるだろうか?と、疑心暗鬼。
また、ゆめまちゆかりの役者さんが集まったものの、ジルドレの顔であった人達が見当たらない。
これは集客大丈夫だろうか。と、正直なとこ思ったんですよ。
けど蓋を開けたら初日満席。それぞれの人脈から人は集まった様子ですね。

全7公演中6回観劇しました。(1回は、横浜で見聞に行ったw)
関根さんは織田信長役でご出演。
最終的に受付で「応援しているキャストは…関根さんでいいですか。」と断定されるに至る。
一応聞いてくれよ一応。
チェキのひとにも、じゃあいつものこの辺で…。とか言われる。
ここのスタッフさんはそういうところあるねん。覚えられて嬉しい人も居るでしょうけど、私は好きではない。ゆめまちという劇場のそういうところが、少し苦手でもあった。私は。

 

さて。本編。
フランスの100年戦争の中で英雄とされながら、のちに魔女として殺されたジャンヌダルク所縁の剣を携えて、ジルドレは海を渡る。
剣を修復し、彼女の復活へのさらなる生け贄を得るため。
たどり着いたこの世の果て。日本は戦国。

オープニングは後々のシーンを交えた内容で、そこにジャンヌやジルドレが迫害される所が音楽と共に挿入される。バックにコミック風の絵が投影される。聞き覚えた音楽。あ、これはジルドレだ…ってなりましたわ。
以前のものをどう取り入れるのか気になっていたので、わりとストレートに雰囲気を踏襲してきたなと思う反面、だとすると、また書かれていない所に頭を使うことになるのかと身構える。
ですが、意味が取りづらくてきびしかったのはその辺までで、あとは普通に見られました。
台詞があるってステキ。何度再生してもお説教を垂れるであろうジャンヌの姿勢、台詞なしではわからなかった。
一箇所唐突なギャグがあり、初日はひきましたが、以降は慣れました。利休さん親子お疲れ様。
毎日見てるとだれてあくびが出るようなシーンってあるものなんですが、それはなかった。まずまず。

史実云々を言うのが野暮な世界で、設定だけを借りたものとして色々目を瞑るべきでしょう。話も、刀を巡る数奇な運命のみが主で、それ以外は彩りと言いましょうか。
後世の歴史を踏まえた台詞やら、この時代にして「おなごは愛に生きるのも一つの道」とか言わせちゃうのは、個人的にはとっても「さぶいぼ」なんですが、我慢でしょうね…大義の前には我慢である。(家康か)
金ヶ崎の砦では若い家康、秀吉、光秀が同じ陣で殿軍(しんがり)をつとめたとされており(諸説あり)、そういう若き日の雰囲気はあったかも。秀吉、かわいかったなw。

存在感があるのは、チラシにある三名ですね。
ジルドレと信長と村正。
刀と拮抗する力をもつ人間です。
ジャンヌと共に剣の主であるジルドレ
その剣を新たなる妖刀に鍛え直した村正
刀と一体になって周りのすべてをねじ伏せていこうとする信長
無双の信長に対して、刀を手にし翻弄された人々はすべて人間代表ですね。

ひとつ疑問が残ったのは、村正の出自。よくわからないです。道安も彼を兄さんと呼ぶのはなんでだ?彼も忍びの出だから武人のように刀を扱えるのだろうか。
ラスト、妖刀ジルドレと、村正のもう一本の剣がクロスするシーン。そこだけは大好きと言っていい。

ジルドレは、ものすごいこじらせたファンのようなものですね。
ジャンヌは生前から態度を変えていないんですよ。
その現実を受け入れないまま自分に見えていた理想の姿を求め続けるジルドレ。
他人の身体を借りたとて、日本的に見れば、妄執だけ残した怨霊のたぐいだと思う。我こそはジルドレがおぉんりょーぅ。歌舞伎できるよ、これ。

殺陣のこと。
関根さんは時代劇をやった人の足の運びであり重心であり、できて不思議なしですが、
殺陣は初めてという人が複数いるのに、”刀を使う今風のアクション”ではなく、しっかりした時代劇の殺陣に仕上がっているのは、殺陣監修をしてくれたかむゐの方々と、現場での稽古の賜物なのだろうと思います。
若い人たちが絡みをがんばってました。
あと女優さんお三方がみな、立派な刀捌きでした。

 

f:id:kikuyamaru:20200303225644j:plain


自分はどうしても信長を追ってしまってました。そこを見に行ったんだから当たり前だけど。
言ってることに全く共感できない役しりーーずなんですけど、あの人はそういう役だからそれでいいんだろうきっと。
槍を操ることで、信長の力のおよぶ範囲が視覚的にも、物理的にも広くなり、お客さんに「圧倒的」と言わしめる印象に大きく貢献していたと思います。ぶん回している槍、20分くらい見ててもいい。(いじめ)
何しろ人間だけど人間じゃないんでww 最後CGで羽がはえましたw。本人苦笑してたでしょう多分。
目配りや、仕草や、台詞の緩急が他の人とは違う、でも浮かないのはえらいね。
あと、ひいろのときのように、足もとがふらついてきたな、スタミナ大丈夫かな…みたいなところはなく、安心できました。
信長のお芝居は初日からさいごまで、まあまあ一緒でした。最初から割と出来上がっちゃったな。この後どうするのかなって思ってたんだけど。稽古場では年長さんの役目だったようですし、自分のお芝居を決めたらそこから動かしていくほどの余地はなかったかもしれないですね。

この舞台全体に言えることですが、間の取り方がしっくりきてて良かったと思う。「間」(ま)は、舞台の仕上がりの印象に大きく影響する。よいテンポにまとまりました。

だが、毎日ハラハラさせた内容が一つある。マイクだ。
信長はマイクが実に良くトビマシタ。声がデカすぎたのかな。千穐楽は大丈夫だったような気がしたけど、マイクがはいらなくなると、音楽にかぶせて肉声で後ろまで届けるようにむっちゃがんばらないといけないので、如何に声のデカい関根さんといえども喉が心配になりました。台詞が何言ってるか分からないのは、ほんにもったいない。
ついでに言うと音楽の音量とかも、気になりましたねえ。うるさくなってしまってたところもあったんじゃないかな。
照明は、見る席によって印象が変わって面白かったです。白く見えていた光が、別の場所からだと3色のミックスだと言うことがわかったり。レーザーも健在でした。
あ、スモーク。あれはちょっと改善してほしい。最前列中央のお客さんは、あの位置であんなにスモークたかれると舞台が見えません。せっかく見える席なのに、全部真っ白みたいなシーンありましたよ。

 

あ、そうそう。いいこと一個足しておく。椅子がいい。

もう、椅子の向きや姿勢に悩みながら見なくていい。代りにおなかはすく。(笑)

 

また作り直しだ…そう言って何度もジャンヌを錬成する男。
それは、このステージを作ろうとした人の姿のようにも思えます。
ジルドレの世界を台詞のあるお芝居として理解しやすいものにし、ゆめまちの外で、なおジルドレとしての芯を失わずに作り上げたことは一応成功だったのではと思います。
しかし、私たちが見たものは、おそらくは、まだ道の途中。今度は又、別の姿で。