kikuyamaru's blog

こちらにはノンジャンルの長文などを書いています。

表と裏のような二人が別の舞台を作る話

ややはばかるので別の所にかいていた文章ですが。もう、何年も経ちましたのでいいでしょう。
昔の話と思ってお読みください。意味のとりづらいところもあるかと思いますが直さず、当時のままコピペしました。

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同じ劇場で、複数の団体が1コマずつ受け持って、それぞれ独立採算で2日間の興行。そういう舞台がありました。

そのうちのひとつについて。これはアクション重視の舞台です。
筋の意味は分からん。あってないようなものだよねー。
あと、人数がとても多い。まあ、出したかったんだろうねえ…
でもアクションをしっかり見せていくことに注力していて
少しお遊びもあって、音と動きのシンクロとか、やってみたいことも成功していて、
のべつ幕なしにずっとアクションしている。全員ができる人ばかりで、主演クラスの人自らの立ち回りも圧倒的で、ああすごかったなーって思える舞台でした。

別のときに、その舞台の重要な役割のかたをお見かけしたのでご挨拶にいきました。
「拝見しましたよ!」
「どうでしたか?」
「人数多かったですねえ」
「人数ばかり多くて」
「のべつ幕なしにアクションしててすごかったですよ?」
「もっとストーリーを入れたかった。」
「?でも、アクション主体でしょう?いいんじゃないですか?」
「ストーリーを入れたかったんです。あれでも入れたんですよ。最初はもっとアクションだけだった。」
って。いつもの困ったみたいな顔で言うんですよ。不本意そうなんだ。
私がそこの団体にしがらみのない存在だから言ってくれたのでしょう。
わたし「うーん、いろいろ制約がありますからね」って逃げてきてしまった。
筋がねえよ、というのはかすかに思って、抑えつけてしまった思いではあったの。
この特上のクオリティを作るため、保つためには、筋がどうでも、ひとが大量でも、しょうがない。
アクションショーがやりたいのに普通の舞台のふりしてやっちゃって、あってもなくてもいいようなストーリーつけて数千円取る舞台より、ずっと満足度も高い。
アクションばかり、上等。それ以外のところは切り捨ても潔し。

だけどだね、それが理想とした結果じゃないのなら話は別なんだ。

その日、あの人やあの人が出てる。
日が重なっていなかったら、別の団体に出てくれたかもしれない人だなって思いながら見ていました。
同じ日に舞台があるもうひとつの団体は、アクションの大切な役割を度々前述の団体にお願いしています。
けど、今回、掛け持ちは無理なタイトな舞台となっています。
だから違う人が来ています。
大事なところに魂が入らない感じ。
こちらは、数週間前に、座長さんが脚本が上がってきたと教えてくれました。赤入れなど忙しかったようです。
「面白くなってると思いますよ。」
「アクションは?トランポリンとかやれば?」
という別の人のことばに
私の頭によぎったのは、同日の別の舞台のこと。
重なるもん。人がいない…

座長の言葉は
「すごいアクションは難しい。
できることで勝負するしかない。
お芝居で。」
と。

なんて皮肉なんだろうと思う。
アクションばかりになってしまったという人と
芝居で魅せると言わざるを得ない人と
それがまた、決して浅くない友人であり、お互いを尊重しているとわかるゆえに。
彼らは…ひとつの役の表と、スタントをつかさどるような表裏一体の関係なのです。
それが、今回、同じ日に同じ劇場で別々の舞台を作る。それゆえに別々の体に引き裂かれる。

結果は、両者の強みを出した舞台になりました。アクションと芝居。
けど、「芝居」にちょっと人貸してくれて、その分「アクション」のストーリーを練り直して…とか、したら、違う出来上がりになったかもしれないよね。
いや、いっそ一緒にできたら。
世の中、うまくいかないですなあ。

(再録)